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なかもとと友かな

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ご存じアプリコット出版筆頭著者。 元AIM English Studio (大阪・堺市)主宰。 Learning World series、『キッズ英語絵本シリーズ』等アプリコット出版刊行物多数。 幼児・小・中・高・大学・大人と全年齢層の英語教育実践家で児童英語教師のカリスマ的存在。 APRICOT児童英語教師養成講座講師。Learning World 認定校スーパーバイザー。
  • Vol.12 いじめ問題 その2    

    今年も、教え子達からの子どもの写真入りの年賀状がたくさん届きました。あのやんちゃだった子が、赤ちゃんを抱いてにっこり写真の中で笑っていたり、 悩み多き少女が5人のお母さんに! みんな、「それぞれ」 立派なお父さん、お母さんになっている姿を頼もしく嬉しく思います。 一方で、入試のためお正月どころではなかった生徒、結婚して初めて2人でお正月を迎えた人。元旦から終日仕事だった人。一人でお正月を過ごした人、大勢の親戚と一緒に過ごした人、皆さんそれぞれのお正月を過ごされたかと思います。

    私は、この “それぞれ(each)” という言葉がとても好きです。私たちは、それぞれみんな異なった生活の中で、それぞれの価値感を持って生きています。それは優劣ではなく、個性であり、決して一つの基準で判断されるものではありません。
    自分(他人)や自分(他人)の環境がより優れている(より劣っている)と感じるのではなく、人とは異なっても、それ自身を肯定的に受け入れることが、本人にとっても周りの人にも本当に大切なことです。

    特に、それぞれの生徒を成長させることが目的である教育現場では、100人いれば100通りの教育的目標や指導法があって良いはずです。
    大阪市立桜ノ宮高校の体罰が原因で生徒が自殺した悲しいできごとが世間で騒がれています。マスコミをはじめ、多くのメディアで体罰の是非が取り上げられていますが、この問題は体罰だけの問題なのでしょうか。

    教育の目標はその個人の成長です。 教育の一面として、生徒を脅し、辱め、追い詰めて、教師の思うように生徒を動かすことが肯定されていることが危険です。体罰もいけないけれど、言葉の暴力、態度の暴力は、もっと生徒を追い詰めてしまいます。体罰だけがいけないという一つの基準ではなく、教育現場では、生徒を追い詰めず、生徒が自信をもって前に進んでいける指導のできる人間が、プロの教師です。

     

    教育者として給料をもらっている限り、自分の基準を押し付けず、それぞれの生徒に一番適切な指導法を見つける能力が、教師には必要です。体罰が法律違反だからいけないという単純な Yes or No ではこの問題は解決しないでしょう。

     

    Vol.11 わが著作物と講演の分析  

    アプリコット出版の編集長、新井氏によると、「無秩序に出てくる中本先生のアイデアをまとめるのが大好きです」・・・だそうですが、その弁を聞くたびに「えっ 私ってそんなに無秩序?」と思います。
    確かに、振り返ってみれば、無秩序とまではいかないけれど、自分の原稿や履歴をオーガナイズするのが好きではないことは確かです。著作の原稿にしろ講演原稿にしろ、自分の考えを構築している過程が最も楽しい瞬間で、本が出版されたり講演が終わった頃には、それらはすでに過去のことになっていて、私の好奇心はとっくに次のものに移っているのです。ですので新刊の本を褒めていただいても講演を褒めていただいても、 ピンとこなくて返答に窮する場面がしばしば。(本当にごめんなさい)

    そんな私が、某大学に依頼され業績報告書を作らなければならなくなりました。学会発表、講演、講師、著作などなどたくさんありすぎて覚えていないので、“抜粋”でなんとかごまかし業績報告書を作って送ると、当然ながらもっと詳しく書くように言われました。過去を振り返りオーガナイズするなんて一番苦手なこと。
    「過去の積み重ねが現在であり、そこに努力とビジョンを足して未来がある」のだから、過去なんて振り返っている暇は私にはありません。次の課題をこなすのに忙しいのです。
    そこで元教え子であり、現在公立中学の英語の先生をしている麻実ちゃんに助けてもらうことにしました。「著作報告」の欄では、2人で膨大な資料を調べていくうちにいろいろなことがわかりました。

     

    たとえば、アプリコット出版から出版させて頂いている本の売れ行き。ラーニングワールドシリーズでは Learning World Book 1 が最も多くの先生方にお使い頂いていて、旧版は23刷、「改訂版」は8刷です。次は、WELCOME to Learning World YELLOW で24刷。絵本はA Teddy Bearが1位で14刷。「私の好きな著作物と使って下さっている方が多いのとは必ずしも同じではないね」とか、「うんうん。これはあの箇所を工夫した甲斐があって、先生方に受け入れられている」
    などと楽しくおしゃべりしながら作業を進めることができました。
    次に、「講演」の欄を埋めるべく、過去25年間の私の講演題とサマリー(要約)を見てみると、一貫して、「答えが一つの従来の英語教育を反省し、言語としての英語教育の重要性」を訴えてきたことがわかります。「テストのための英語教育ではなく、自分の考えを構築し、発信するための英語教育」が、40年近く児童英語教育に携わってきた私の、ぶれのない信念です。

     

    講演演題で一番多かったものは「英語を武器にできる日本人」でした。
    残念ながら、私の出身の大阪市では「小学6年生で、英検3級をめざすフォニックスを中心として英語活動」を行うという、訳のわからないことを始めるようです。来年こそは、現行の英語教育のどこに問題があるのかを真剣に考え、言語としての英語教育とは何かを理解してくださる人が一人でも多く出ますように。

     

    Vol.10 児童英語教育を始める前に  

    10月20日、21日の両日には、東京でアプリコット出版主催「児童英語教師養成講座」の講師を務めさせていただき、11月10日からは大阪での全6回コースが始まりました。 2000年に始まったこの講座は、今回で受講生が200人を突破し、責任の重さを痛感しています。

    東京での講座はゼミ方式で受講人数を絞り、短時間(2日間15時間)コースでおこないました。
    全15時間の中で受講生の皆さんにお伝えしたいことが多く、情報量の妥協はしたくないので、ただひたすら喋り続ける結果となりました。
    この児童英語教師養成講座は、実際のゲームや歌を学ぶ前に、まず「日本における従来の英語教育は成功しなかった原因」をbrain stormingをすることから始めます。 現在中学校、高校で行われている英語教育の間違いを理解せずに児童英語教育をはじめても、問題を先送りするだけだと思うからです。 英語教育の到達点は、言葉を使ってグローバルな社会で生きていくことにあります。なぜ、日本の英語教育が成功していないのかをきちんと検証せずに、またはその間違いが わかっていても改善しようとしないまま、公立小学校に英語を導入することに違和感をおぼえます。

    英語教育の問題点を具体的な例からKJ法を使って分析すると、次のような問題点が浮かび上がります。
    1. 社会的側面   ・教える側も習う側も英語の必然性に対する認識が薄い
                 ・多言語社会ではないので、話す機会が少ない

    2.情意的側面    ・積極性に乏しい
                    ・英語を話す人に対するやっかみ
                    ・間違うことに対する抵抗

    3.教授法的側面   ・言語教育ではなく、教科である
                  ・日本人の講師が作る日本人生徒にしかわからない試験問題
                  ・使う必然性のないパターンプラクティスに終始している
                  ・目的が分からない書き換え問題
                  ・長文読解と呼ばれる部分英文分析

     
    上記の問題点の中で、私が一番問題視しているのは「必然性に対する認識が薄い」ということです。 英語を習う理由が、「大学入試に有利なように」「海外旅行をより楽しくするため」「外国人の友達が欲しいから」「道で外国人が困っていた時に助けたい」という単純なものが多い上に、教える側も「まさかヨーロッパ人のように英語が自由に使える 生徒が高校3年生までにできる訳がない」と最初から諦めている様子。

    「第一、先生も英語がそこまで使えない」「日本語と英語の構造が違うから、英語は難しいので学校教育ではその素養を養いましょう」なんて平気な顔で言っているのです。 莫大な予算と生徒の時間を使いながら、英語という技術一つ満足に教えられないのが日本の現状です。

    小手先の工夫だけではなく、根本的に英語教育の流れを変え英語を使える生徒を育てることにもっと執着しましょうよ。 今日本では「原発問題」「エネルギー問題」「経済問題」「自然破壊」「食糧危機」などの問題が山積しています。これらの問題は、世界に共通する問題です。

    地球の一員として、日本社会と日本人がより賢明に生きていく手段として、国際的な情報の授受や議論、協力が必要ですし、その場では英語は必須だということをもっと危機感を持って自覚するべきでしょう。この点に問題意識を持っていなければ小学校から英語を教える意味も資格もありません。

    Vol.9 いじめ問題  

    大津市で起こった悲しい悲劇、中学生の自殺がマスコミに取り上げられるようになってから、新聞や
    雑誌では、さまざまな分野で活躍する著名人がいじめられている人にメッセージを送っています。その中で、多くの著名人、コメンティターが公言し始めた言葉の中に、気になるものがあります。

     

    それは「学校なんて行かなくてよい」「学校を休むことくらい大したことではない」「学校は行きたくなければ行かなくていい」というメッセージです。いじめられて苦しんでいる人に対する励ましとして書いているのかもしれませんが、 紙面上でこのようなメッセージを毎日読んでいると、学校制度の崩壊の危機を感じます。

     
    被害者が学校に頼ることができず、警察に被害届を出す例も増え、学校教育の無力さが如実に表面化しはじめました。当事者である教育委員会、学校、そして個々の先生方は、どう感じていらっしゃるのでしょうか?
    「いじめ」問題にはいろいろの要素が複雑に絡み合っているため、 この限られたエッセイの紙面で取り上げるのはとても難しいことです。

    一つには「すべてが数値で表す現在の価値観」が挙げられると思います。物の価値はお金という数値で測られ、個人のペースは時計という数値で測られ、個人の努力も結果だけが数値で表わされます。すべての人間が一つの基準で測られ、数値が高いもの、時間が速いことが良い、と判断される世界の中で、子ども達が悲鳴をあげている現実。数値で測る単一の基準だけで子どもを見るのではなく、多様性をもつ価値基準を持ち、それぞれの子の良さを見つけ、認め、褒めるという教育の根本のところが抜けている現実。

     
    また、「人に危険なことをさせて、その態度を笑いにもっていく日本のバラエティ番組」、 「人を殺したり暴力を振るうことを前提としたコンピュータゲーム」もあるでしょう。自尊心を育てる教育の欠如、学校側に「いじめの対策」の組織がない、教育側のプロ意識の希薄なども考えられると思います(学校の先生の多忙がよく問題視されていますが、忙しいのは学校の先生だけではありません。医師やビジネスマン、みんなプロとして、過酷な環境の中で働いています)。

     

    “いじめ”という言葉を使うことは好きではありません。「ふざけているだけ」とか「遊んでいるだけ」という言葉にごまかされることが多いからです。 私は「人の嫌がることはしてはいけない」という言葉を使って子ども達を指導してきました。人にはそれぞれの基準があり、自分ではそれがふざけやジョークだと思っていても、言葉や行動が相手を大きく傷つけることがあります。 ですから、自分がどう思うのかでなく、相手を尊重することが大切だと教えなければいけないと思います。

     
    このエッセイを読んでくださっている方々は、公の学校の先生よりも少人数で教えていらっしゃる“お母さん先生”が多いかと思います。たくさんの生徒を相手に授業を進めなくてはならない学校の先生に比べ、一人ひとりの子どもに近い立場で、いじめられる子どもだけでなく、いじめる側の子ども達ともゆっくりface to face で話せる立場にいると思います。英語は、言語を扱う全人教育です。

    ・「学校は行けなくても英語の教室に来れば自分の居場所がある」
    ・「自分を認めてくれる先生がいる」
    ・「英語の教室ではみんながお互いの違いを認め合っている」

    学校の先生でも親でもない“一番信頼できる大人”になりえる私たちが、子ども達にとって羽を休めてエネルギーを蓄えることができる場、安心の場となるような教室を作っていきましょう。先生が神経質になりすぎたり構えたりするのではなく、緊張した子どもの心をスコンと解放させてあげてください。

    Vol.8 アプリコット出版の編集長、新井氏と私  

    大阪でおこなわれたAPRICOT児童英語教師養成講座で、新井氏と私の会話を聞いていた受講生の皆さんから、「漫才より面白い」とお褒めの言葉(?)をいただきました。新井氏とは、もちろんアプリコット出版の編集長、新井顕子氏です。
    ラーニングワールドを執筆し始めて20余年になります。 この間2人でスクラムを組んで150以上の児童英語教育に関する本やワーク、教具を作ってきました。テキスト作りを通じて、日本の英語教育をより良いものにしようという情熱で固くむすばれた(?)2人ですが、そのエネルギーのぶつかり合いは、大変なものです。
    そんな新井氏と、昨日、久々に夜中の3時30分まで仕事をしました。 千葉と大阪のそれぞれの自宅をスカイプで結び、明け方まで真剣なバトル。2時過ぎになると彼女の手に何かが・・・
    「あっ!ビール飲んでる!」と私。そこはスカイプですから全部お見通しです。
    「なに言ってるんですか、ノンアルコールですよ!」とムキになる新井氏。
    そんな私も、とっくに、ワイングラスを片手に・・・。

     

    新井氏と私は13歳違いですが、彼女の「中本先生から無秩序に出てくる斬新なアイデアをまとめるのがだぁ~い好き!」という褒めているのか、けなしているのかわからない言葉に乗せられ私は本を作り続けているのです。
    「どうしてこれが分からないの!日本の英語教育には変革が必要なの!」と私。
    「わかりますが、それは時期尚早です。出版社の人間として今は認められません!」と彼女。でも、後で必ず会社と掛け合ってくれるのも彼女です。

     

    1冊の本の制作には大勢の人が関わっています。内容を書く著者、本の文字、絵、表紙をデザインするデザイナー、絵を描くイラストレーター、英文校閲スタッフ、音楽を担当する音楽家、英語の文章や歌を収録する声優、それを録音し編集するスタジオスタッフ、CD制作、印刷、製本会社の人。 編集者は、そのみんながそれぞれもっている能力を最大限に生かし、しかも調和をとりながら本を作っていく、ちょうどオーケストラの指揮者のような役割をします。ただし、この新井氏率いるシンフォニーの楽団員は、みんな一筋縄ではいかないツワモノぞろいです。そして、全員が 良い物を作るためには労を惜しまない仕事に対する一途な情熱と純粋さを持っているように思います。新井氏とは、著者と編集者というより「戦友」と言った方がよいのかもしれません。 そんな新井氏と私の20年来の合言葉は「仕事とパートナー(男性)選びには絶対に手を抜かないこと!」。
    おかげで、Learning Worldや絵本シリーズは累計110万部を突破、多くの方にお使いいただいています。そして・・・2人とも良き仕事の理解者であるパートナーを得ることができました!
    時々、顔を見るのもいやになることもあるけれど、これからもよろしく。
     

    *中本先生とは13ではなく14歳違いです。こういう凡ミスの訂正も 私の仕事です。(笑) by新井

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