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なかもとと友かな

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ご存じアプリコット出版筆頭著者。 元AIM English Studio (大阪・堺市)主宰。 Learning World series、『キッズ英語絵本シリーズ』等アプリコット出版刊行物多数。 幼児・小・中・高・大学・大人と全年齢層の英語教育実践家で児童英語教師のカリスマ的存在。 APRICOT児童英語教師養成講座講師。Learning World 認定校スーパーバイザー。
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  • Vol.37  発展と進歩

    新型コロナ禍中に明けた2021年、皆さんはいかがでしたでしょうか。帰省や年始の訪問も阻まれ、例年とは異なった年始を過ごした方も多いかと思います。
    現在私たちが直面している様々な問題。それは新型コロナ拡大だけでなく、地球温暖化、自然破壊、動物の絶滅危惧種の増加等、人類が突き進む経済社会の発展と自然体系との調和がうまく行われていないことが要因です。
    発展には必ず”負“の部分が生まれます。 例えば、原子力発電の発達は当然のごとく高レベルの放射性廃棄物を産出し、住宅開発で行き場やエサを失う野生動物が生まれます。 “突き進む”ことを「発展」ととらえ、発展と共に“負”をも生み出しながら変容していく社会構造を govern (統治し管理運営をする)するだけの「知恵」を人間が持っていないのがその原因かもしれません。発展と呼ばれるものが必ずしも悪いと言っているわけではありません。社会の発展、技術の発展、医学の発展、科学の発展は、我々の生活を便利で豊かなものにしてくれました。しかし、それによる負の部分を十分認識し人間の知恵をもって管理対処できてこそ「進歩」と言えるのではないのかなと思います。

     

    あまり、堅い話を書いているとなかもとらしくないので、ここでトピックスの方向を少し変えましょう。

     

    お正月に楽しみにしているものにウィーンの学友協会で開催されるニューイヤーコンサートがあります。ウィーンフィルの華麗な音楽はもちろんのこと、フォーマルウェアの人々が集まる華やかな中にもピンと張りつめた緊張感が漂うホール、演奏が終わるたびに湧き上がる歓声と拍手には、毎年テレビの前で魅了されます。
    今年は残念ながら 新型コロナウイルス感染防止のため、コンサートは無観客の中で行われました。指揮者の入場時にも演奏終了後にも拍手はなく、人影のないホールがテレビで映し出された時は胸が痛みました。 しかし、驚いたことに、オンラインで結ばれた世界各地7000人の人々の映像が、第1部と第2部の最後に映し出されたのです。さまざまな人種、さまざまな国の人(そして様々な時間帯の人達)の感動に満ちた拍手が笑顔と共に映し出され、同時にその拍手はホールの演奏者たちにも届けられました。
    「人間はこうあるべきだ。私たちはコロナ禍でありながら、音楽に感動する豊かな感性をもっていて、技術の発展をも手にしている。そして、技術を駆使して人種や国を超えてその感動を分かち合える知恵をもっている。」 —–自宅で一人このテレビ中継を見ていた私は、今までにない感動を覚えました。(そして、アンコール曲のラデツキー行進曲にあわせて指揮をしながら踊り出したのは言うまでもありません。(前回のエッセイ参照))

     

    では、英語教育における”発展“とは何でしょう。公立小学校に英語が正課として導入されてもうすぐ1年になります。それに伴い、来年度(今年の4月から)改定される中学の英語教科書は語彙数が大幅に増え、いくつかの文法事項も高校英語から降りてきて随分難しくなるようです。
    公立小学校の英語教育は、知識の先取りを目的にしてはいけない。小学校から認知的活動を通じて英語を運用する能力(聞く、話す、読む、書く)を育む活動を導入し、その教育体験を経て、中学では、語彙、文法を教えるだけではなく、自分のことや考えを人により深く伝えたり、英語で書かれた文から知識を得たりする、意欲を育む授業へと展開することが大切です。
    折角、小学校から英語教育を始めることになったのだから、前に進む教育をちょっと止めて、増えた時間で知識を自分のものにし、目的をもって英語を使えるよう、能力の幅を広げる教育に時間を使いましょう。伝えたいこと、知りたいことが先にあり、その方法としての文構造や語彙が増えていくのが自然です。必修の文法事項や語彙を機械的に暗記することを強いれば、英語という科目はますます実のない発展に突き進んでいくことでしょう。

     

    今、我々に求められているのはやみくもに前に進む発展ではなく、知恵を使って幅を広くする進歩なのかもしれませんね。
    (この進歩を sustainableな社会と呼ぶのだと思いますが、昨今このsustainableという言葉があまりにも安易に使われている気がして敢えて使いませんでした・笑 今年も皆さんと共に考えていきたいと思います。)
     

      

    Vol.36 音楽はすばらしい 

    歌やチャンツは児童英語教育には欠かせません。楽しい歌やチャンツは子供達の心を解放してくれると同時に、英語の表現や語彙などを簡単にしかも効率よく定着させてくれます。そのため、Learning Worldシリーズでは多くのチャンツや歌が文の定着のために採用されています。どの歌も編曲が明るく楽しいので子供達が喜んで歌ってくれます。
    先日、アプリコット出版から1999年に出版させていただきました『We are Japanese やねん』をお読みいただいた方から具体的に感想をお伝えいただき、久しぶりにパラパラめくっていて、

    4章「歌とチャンツは英語教育の特効薬」
    8章「英語を教えているのですか? いいえ、子供たちの好奇心を引き出しているのです」

    に目が留まりました。まさに、英語の歌を教えるというよりも、指導者の皆さんご自身がまず楽しんで歌うことが子供達の気持ちを引き出す重要なポイントです。

    We are Japaneseやねん

    今、私は大人の方々を対象とした英語劇や英語絵本の朗読のクラスを持っているのですが、そのクラスでは最初に ”Lip Warm” と” 心の解放” を目的として、楽しいチャンツと歌をみんなで大きな声で合唱します。12月の私のお勧めの歌は、Learning World Book3にある2曲、I Love the Mountains(“Bundiada” song)と、On Christmas Dayです。
    On Christmas Dayの歌 は、セリフの部分を生徒同士の掛け合いにすると、ちょっとしたミュージカルのようになって楽しいです。オリジナルの歌で出てくるのはcar と trumpet の2つですが、私は kitten(meow meow), duckling (quack quack), puppy (bow wow) , train (Choo-choo) などを加えて、生徒全員にspokenのパートがあるように工夫しています(今はコロナ禍のため、大きな教室で、マスクをつけて、それぞれ違う方向を向いて、歌っています)。
    I Love the Mountains の歌の方は、陽が落ちるのが日に日に早くなり、火の明るさと暖かさが恋しくなる(=I love the fireside when all the lights are low)  師走のこの時期に必ず取り上げる歌です。特に、間奏から2コーラス目に入る前の♪Bun Bun Bun♪のところが大好きで、歌うたびに生徒達よりも自分が楽しんでしまうので、子供達からは「bunbunbun先生だ」と言われていたほどです。
    ここで、ちょっと「児童英語教師養成講座」ふうに解説しますと、児童英語教育は英語を使うことを目的としたインフォメーションギャップのある活動で始めて、その後、歌やチャンツを使って活動で使った語彙や英文を定着させます。
    私たちの情報処理能力には限界があり、定型表現や語彙などの新情報は4±1を超えると難しくなります。リズムのある歌やチャンツは一つの意味を成すかたまり(チャンク)を1拍としてみなすので、長い文章でも比較的たやすく覚えることができます。また、歌やチャンツは文の繰り返しを多く含んでいるものが多いため、英語の規則性に気付かせながら楽しく唱えることができ、よりスムーズに定着するのです。
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    現在コロナ禍で世界中の人が苦難を強いられています。ともすれば落ち込んでしまいそうな日々が長く続いていますが、そんな時、私はi-phoneで好きな音楽を聴きながら散歩に出かけることにしています。
    私の好きな音楽、それはヨハン・シュトラウス(I・Ⅱ)の作品です。ウィーナーワルツの軽快なリズムを聴いていると、自然に心が弾んできます。指揮者はやっぱりヘルベルト・フォン・カラヤン。「皇帝円舞曲」で散歩道にある小さな池がさながらクロード・モネの睡蓮の池に変身し、「美しき青きドナウ」では、細い水路が水がとうとうと流れるドナウ川に変わり、ワルツ「春の声」では舞踏会の美しいドレスをまとって踊り、ポルカ「雷鳴と稲妻」では小学生の頃に戻って徒競走の走者になり、「オペレッタこうもりの序曲」の曲になると、公園の芝生の上で私は The Sound of Music のオープニングのJulie Andrewsになって広い高原を小走りに走りだすのです。(ちょっと古い?)

    こうして、私の目標である8000歩/dayの散歩は楽しく幕を閉じます。

      

     

    余談ですが、来るべき私の葬儀の時は、出棺時には「ラデツキー行進曲」をかけてくれるよう息子に既に頼んでいます。息子曰く、「僕は霊柩車の上に立ち、指揮者のように参列の皆さんに手拍子の合図をだすからね。」⁉

    コロナ禍、毎年恒例になっている大阪フェステバルホールのニューイヤーコンサートも来年は断念しました。残念ながら日常生活が取り戻せる気配はまだありませんが、皆さん、元気を出してご自分のお気に入りの楽しい音楽を聴いたり、子供達と楽しく歌ったり踊ったりして明るく過ごしましょう。
    来年が良い年でありますように。

    Have a Merry Christmas and a Happy New Year.🎄🎀

    Vol.35 心に届く言葉、届かない言葉

    コロナウイルスで皆さん不自由な日常生活を余儀なくされていらっしゃることと思います。
    不安になる最大の原因は、先が見えないことです。勿論、人生の殆どは次の瞬間何が起こるかわからないのですが、予測不能の状態が人の心を一番不安定にさせるものですね。そんな時、私は一番悪いシナリオを頭に描き、それに対処する方法を考え、心構えを持つことにしています。
    「想定外でした」という言い訳はしたくない。社会や経済は人間の心理で直ぐに崩れます。順風満帆の時は誰しも上手に生きていくことができますが、窮地に陥った時こそ、人の「人となり」というか「真価」がわかります。
    あなたの真価が問われるのは今です。Feelings やemotion に流されずに、事態をできる限り客観的に分析し、次の一歩を決めたいですね。「不要不急の外出は避けてください。」と言われますが、70歳の私は日常の殆どが不要で不急です(笑)。コンサートや習い事、各種会合がすべてキャンセルになったので、仕方なく(?)毎日、自宅にこもって、次に出版になる『実践家からの児童英語教育法 テキスト編』の執筆に励んでいます。2003年に出版した「実践家からの児童英語教育法」は全3巻、「解説編」「実践編AB」「実践編CD」から成ります。その解説編をアプリコット出版主催の「児童英語講師養成講座」の小冊子と合わせて、大学でも使える13章(半期15講座に合わせた)にまとめた、児童英語教育に携わる人のためのテキストです。児童英語教師養成講座で受講生の皆さんに直接お話しする時と同じように、皆さんにより深く理解していただけるように、言葉を選びながら書いています。
    話はコロナウィルスに戻りますが、この緊急事態で我が国の総理大臣や某大国のT大統領をはじめ、各国のリーダーから国民に向かっての緊急会見をテレビで見る機会が増えました。それらを聞く度に、なぜ、こんなに心に響かないスピーチを政治家はするのだろうかと苛立ちを隠せません。言葉というものは本当に難しいものです。語彙が豊富で、文法的にも完璧で、美辞麗句をどれだけ並べても、全く聞く人の心に届かない言葉ってあるのですね。言葉だけが上滑りしているようで虚しさだけが残ります。「この事態を重くとらえ、政府全体で迅速に適切に対処し国民の平和を守っていく所存です」???いったい現実的に何をするの??? たぶん、「どこから突っ込まれても逃げ道がある」、「人に理解してもらう前に自分の正当性をアピールしたい」、そんな気持ちが抽象的な言葉を生み出し、では「実際にどうするのか」、国民、政治家が一緒になって何をするべきなのかが伝わってこないというか、言っている本人もわかっていない。誠意や心のないスピーチは言葉であっても相手の心に届かない。言語教師として、子供達に何を教え、伝えていかなければいけないかを再考する良い機会になりました。
    我々の分野でも、「ファシリティター」「アクティブラーニング」「コミュニケーション能力」「タスク学習」という言葉を頻繁に目にしますが、英語教育に大切であることは理解できるけれど、実際、どういうこと?・・・言葉だけが独り歩きしているようです。
    現在私が執筆している『実践家からの児童英語教育法』は、タイトルにあるように、実践家であるがゆえに、「〇〇〇が重要ですよ」と理論を述べるだけでは済まされない。実際にレッスンの中でどうすれば良いのか。どうすれば子供達の心に響き、届くのかを、言葉を尽くして読者の皆さんに理解をしていただいてこその実践家です。私は英語教育法について、実際何をどのように教えるべきかをお伝えすることはできますが、この状況で、それぞれの教室の運営状況の中で、今何をすべきかは、皆さんの知恵でお考えください。インターネットを活用したオンラインレッスンをしていらっしゃるとか、年度末のテキストの総復習で、Achievement Targets(これだけできるようにがんばろう)の課題を子供達がそれぞれ自宅で頑張っています、という声も届いています。まだ当分不自由な生活が続きますが、「想定内」と笑って過ごす「強さ」と「明るさ」があってこそプロだと思います。
    中本からのエールを受け取ってください。
    さあ、エッセイも書き終えたし、今からテニスに行ってこようっと。
     

    Vol. 34 2020年の仕事はじめ

    あけましておめでとうございます。

    あっという間に1月も半ばになってしまいました。

    孫たちと楽しく過ごしたお正月の余韻に浸って、ゆっくりと優雅な時を過ごしていた私の元に、東京からアプリコット出版の編集長の新井顕子氏がやって来ました。彼女の大きなキャリーバッグは今回の仕事の懸案事項ではち切れそうに膨れ上がっていて・・・。

     

     

    「先生、まず、今年はWELCOME  to Learning World YELLOWの改訂です。それにWELCOME PINKActivity Book 。5月には「英語を子供に教えるための講座」が始まりますので、そのテキストの編集もあります。この講座は秋にも開催しますよね?」

    彼女は引きずってきたキャリーバッグの中からそれぞれの仕事の課題とそれに関する資料を次々出してきて、まるで手品師のように不敵な微笑みを浮かべる…

     

    その後、これから刊行するもの、すでに刊行したものに関して矢継早に質問開始。

     

    「再確認させてください。BRIDGE(Book 4)の位置づけは?どうしてBook 1, 2, 3に出てきた活動やチャンツがまた出てくるのですか」と新井氏。

    「決まった日常のやり取りだけでなく、自分の意見をちゃんと相手に伝えるには文法の指導は欠かせません。日本では文法が、“コミュニケーションで使う言語”とはかけ離れて教えられてきたために、児童英語教育では文法教育は敬遠されがちですが、機能から文の規則を教えていくことはとても大切です。それも、高学年になって初めてやるのではなくて、WELCOMEシリーズやBook 1,2,3の時にコミュニケーション活動の中で使った英語や、定着のために暗記したチャンツや歌などが十分に子供達の体の中に溜まってから、「帰納的」に文の規則をorganize(整理)させることが次のステップに行く大きな礎になります。Organizeして、規則を理解した上で、その文を応用して自分のことを言ったり、否定形や疑問形の作り方の練習をワークブックでできるように作りました。」

     

    「教える時のコツは?」と新井氏。 「アクティビティやチャンツはそれまでに何度もしているから、使えるかどうか確認するくらいで、これ覚えてる?“Do you remember this chant? Let’s see if we can recite it,OK?”  って感じで。その後、その文がどんな構造になっているか生徒の気づきを引き出すように話し合いながらLet’s Study のページに移ります。先生がただ解説するのではなくて、生徒が文の規則に気づくようにオーガナイズするのがポイント。」

    「英語でですか?日本語でですか?」と新井氏。 私:「どちらでも結構です。Book 3まで済んでいるのなら是非英語を使ってください」

    「英語で文法を教えるのは難しいのでは?」 私:「その為の英語は指導書に乗せています」

     

    「英語を文法で教えて生徒は理解できるのですか?」「日本語がわからない外国人の先生は?」  私:「先生が英語で授業をしても、生徒はテキストに記載された日本語があるので理解できます。英語で教えることは先生にも、生徒にとっても良い機会になると思います。もちろん、日本語ができない先生は英語で教えてください。子供達はテキストの日本語を見て十分理解できます」

    「Let’s Writeの意図は?」—–「気づいた文型(form)を使って自分のことを書けることが目標です。だから設問は、生徒個人を無視したような、この文を否定形にしなさい、とか、疑問形にしなさいといった設問ではなく、“Write each sentence. If they are not true for you, rewrite them using “not”にしたでしょう。

    「書いたら終わりですか?」

    「いや、自分のことに関する設問なので、書いた内容について先生が質問を加えて、そこからクラスで会話を拡張できるようにしています」

    「たとえばどんな質問?」 ・・・・私はだんだん腹が立ってきて、「書いたでしょう。それに対する質問例をたくさん指導書に!」

     

    いやはや新井氏はプロの編集者です。たとえ自分が知っていることでも、もう一度著者から言わせる。それが現場の先生に一番理解してもらいやすいことを知っているから…(腹黒い奴!!) 彼女の質問はまだまだ続きます。時々、わざと私を苛立たせる技術を散らつかせながら。

     

    「ラーニングワールドシリーズ最終巻のTHE FUTUREはReadingのためのテキストですか?」

    (その質問で中本、ムカッと来る) 「そうじゃないことぐらい解っているでしょう。私は元々、中学3年生で自分で情報を取り、自分の中で消化し、自分と人の意見を交換させながら、自分を発信させていく子供達を育成するというDestinationを定めていて、そこへ到達するために幼児から発達段階に応じて「何を」「どんな手段で」教えるかを熟考してこのシリーズを作ってきたのであって、幼児・児童英語教育だけに興味があるのではない!!!」

    *教材のタイトルとして、Learning World Book 6 THE FUTURE にTHEを入れることにこだわったのは、漠然とした”未来“ではなく、ラーニングワールドシリーズ10巻を通して「到達する未来」の意味を大切にしたかったからです。

     

    (40年近く前、私がこの業界で認められた最初の学会発表―JASTEC(日本児童英語教育学会)では、児童英語の学会だと知った上で、児童英語教育を受けて中学生になった生徒たちを引き連れて実践発表をしました。当時はビデオによる発表ではなく、実際に中学生を10人ほど連れて行って、学会会場でぶっつけ本番で授業を先生方に見せ、その後、授業の内容を解説するという発表形式でした。その時私は、歌ったりゲームをする楽しい授業ではなく、児童英語教育の到達目標、結果を示した発表をしたかったのです。)

     

    「だからぁ (まさに新井氏の思うツボ。私はだんだん興奮し、声を荒げて自分の考えをわざとゆっくり言うことに。) THE FUTUREは単なるReading教材ではなくて、情報を取って、情報を取るのは文からだけではないでしょう。書かれたもの、見るもの、そして聞くもの。それらの情報を母国語と英語で自分の中で消化して、それを理論的にまとめて自分の考えを構築し、効果的に相手に伝えることができる」

     

    「そのためには先入観を持たないで自分を臆せず表出できることが重要で、それがラーニングワールドシリーズの到達目標でしょう。(自分で編集した『実践家からの児童英語教育法 解説編』の「国際コミュニケーションを育てる活動」pp.38-44 をもう一度読み直せ!!!)」

     

    「ラーニングワールドシリーズは、ある年齢では楽しく、ある年齢では知的好奇心を刺激し、学ぶ楽しさを体感させながら、先取り教育ではなく、根の部分をしっかりと育てながら子供達がその最終目的に達することができるように構成されたシリーズです。」

    ここまで一気に喋ったところで、してやったりと彼女が笑ったのを私は見逃しませんでした。その後も2人の禅問答のような駆け引きは暫く続きました・・・・。

     

    2日間のバトルを終えて、芦屋駅前の居酒屋で2人で乾杯。この後、やっと静かな日常に戻ることが出来ると安堵していた私でしたが、東京への帰り際、去っていく前に新井氏が一言、「あ、先生。言うの忘れていましたけれど、今月のエッセイ、明日の朝くださいね」  あぁ~!!

    本年もよろしくお願いします。

     

    Vol. 33 That’s the way it is.

    子供は小さい時から様々なことに興味を持ち、疑問を持ちます。どんなお母さんでもある時期、子供からの「なぜ?」「どうして?」の質問攻めに遭い、つい面倒になって「どうしてでも」「なぜでもそうなの」(That’s the way it is.)「ずっとこうだったからそれでいいの」と答えてしまった経験が少なからずあると思います。しかし、我が家では子供が物心ついた頃から「“どうしてでも”は答えになりません」が二人の合言葉でした。そのため、疑問を持てば必ず調べ、理論的に納得できるまで、答えや解決法を調べるという面倒な過程を辿ることになりました。その結果、息子はガチガチの理系人間になり、私は理屈っぽいおばさんになりました。現在の年齢になり周りを見回してみると、性別や専業主婦、働く人にかかわらず、疑問を持たずに目の前の事項をこなしながら生きてきた人と、疑問を持ち、自身の考えに悩み、道を切り開いてきた人では、長い間にずいぶん違いが出てくる気がします。もちろん、どちらの生き方が良いか悪いか、ではなく。

    中学3年生の時、神戸にあるインターナショナルスクールに行ったのがきっかけで、日本の英語教育の方法に疑問を持ち、今日までずっと「使える英語」を習得するための英語教育を突き詰めてきました。世間や学会がどう言おうが私には関係ありませんでした。英語を好きになり能力を付けていく教え子だけが私に指針を与えてくれました。その教え子たちが示してくれた結果が私を突き動かす原動力となり、そのことに何の疑問も持ちませんでした。

     

    しかし、先日とある講演を終えた時、ある先生が「あぁあ、カードをフリップしたり、カードを取り合いっこしながら単語を教え、文法と訳を教えるだけなら楽だったのに、言語教育なんて言いだして厄介なことになったもんだ」と仰ったのです。そうです、同じ給料をもらって同じ時間を使うなら、楽な方がいいに決まってる。それが労働の効率が良いということ。。。私は、驚くとか怒るとかでなく、「あー現実はそうなんだ」と妙に納得し、その言葉が心に残りました。

    日本の英語教育の行く先はまだまだ定まっていません。私は自分の信じることを具体化するために実践を積み、勉強も重ねてきましたが、「従来の楽な教え方」を前に屈してしまいそうです。いやいや、「なぜでもそうなの」「ずっとこうだったからそれでいいの」は答えになりません。ラーニングワールドはアプリコット出版と共に、従来のパターンプラクティスや単語の習得だけを目的とした教え方に疑問を持ち、新しい教え方に挑戦してきました。

     

    そんな中、鳥飼玖美子先生がおっしゃったことに、勇気をもらいました。以下朝日新聞11月18日からの抜粋です。

    「・・・4技能の土台は読解力、つまり「読む」ことです。読むことによって単語の使い方や文章の組み立てを学び、それをもとに書くことを学ぶと、聞いて分かるようになる。そして話せるようになるのです。日本では多くの人が自己紹介や道案内などが「話す」ことだと勘違いしているようです。日常会話は決まり文句を覚えてしまえばいい。(略)でも、「話す」ことは、自分の考えや主張を英語で発信できるか、英語の理論で伝え理解しあえるかなのです。そのためには、英語という言語のルールを知らなければなりません」それが文法です。 (略) 「話す」教育が必要ないと言っているわけではありません。高校まででも、読んだことについて討論したり、発表したりして4技能を総合的に学習すればいい(後略)」 (朝日新聞2019年11月18日「英語民間試験見送り 今後の課題は」より)

    上記に加え、情報を得るのは、書かれたものの読解だけではなく、現実の日常やテレビなどの(実)映像を伴うものがその大半だということを考慮し、ラーニングワールド最終巻 “THE FUTURE” (編纂中)では“読む情報、聞く情報、見る情報”という3種類のソースが単独、または複合された情報を英語で理解し、自分でまとめ、討論、発表(口語・レポート等)する能力を育成できるように構成したので、この記事を読んで溜飲が下がる思いでした。

    ラーニングワールドシリーズは決して楽しいだけの教材ではありません。

    鳥飼先生の言葉をお借りすると、「英語で発信されている情報を基に自分の考えや主張を発信できる。英語の論理で伝え理解しあえる」子供達を育てる到達点(Destination)を目指して作られたコースブックです。

    3,4歳から発達段階に応じて、インフォメーションギャップのある活動やCreative な活動を通じて自分の考えを持ち、まとめ、表出できる活動がデザインされています。定着を促すチャンツや歌に楽しいリズムやメロディを付け、内容には年齢に応じたユーモアを入れて子供達に親しみやすくしました。

    そして、ある程度学習を経た時点で、言語活動やチャンツを使って言語のルール(単語の使い方や文の組み立て)を帰納的に学ぶ“BRIDGE ”によって、より深く明瞭に自分の考えを相手に伝えることができるのです。その意味でBRIDGEは次のステップに行く重要な過程と言えます。その後“TOMORROW”では、より複雑な文構造を使ってより深く、より理論的に英語で伝え理解しあうことに焦点を当てました。そして、“THE FUTURE” 終了時には、あるまとまった英語の文または映像から情報を的確に得て、そこから論理的に自分の意見を英語で発信でき、他者とコミュニケーションできるようになることを到達点として、この全10巻という長いコースブックに取り組んできました。

    「ずっとこうだったからそれでいいの」に対する私の挑戦です。一人でも多くの先生方に理解していただきたいと思いながら。

    I thought I reached the end
    The end of a long long journey
    Only to find it’s not over
    There’s so much more to discover  [銀河鉄道999] by 奈良橋陽子さん

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