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なかもとと友かな

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ご存じアプリコット出版筆頭著者。 元AIM English Studio (大阪・堺市)主宰。 Learning World series、『キッズ英語絵本シリーズ』等アプリコット出版刊行物多数。 幼児・小・中・高・大学・大人と全年齢層の英語教育実践家で児童英語教師のカリスマ的存在。 APRICOT児童英語教師養成講座講師。Learning World 認定校スーパーバイザー。
  • Vol. 34 2020年の仕事はじめ

    あけましておめでとうございます。

    あっという間に1月も半ばになってしまいました。

    孫たちと楽しく過ごしたお正月の余韻に浸って、ゆっくりと優雅な時を過ごしていた私の元に、東京からアプリコット出版の編集長の新井顕子氏がやって来ました。彼女の大きなキャリーバッグは今回の仕事の懸案事項ではち切れそうに膨れ上がっていて・・・。

     

     

    「先生、まず、今年はWELCOME  to Learning World YELLOWの改訂です。それにWELCOME PINKActivity Book 。5月には「英語を子供に教えるための講座」が始まりますので、そのテキストの編集もあります。この講座は秋にも開催しますよね?」

    彼女は引きずってきたキャリーバッグの中からそれぞれの仕事の課題とそれに関する資料を次々出してきて、まるで手品師のように不敵な微笑みを浮かべる…

     

    その後、これから刊行するもの、すでに刊行したものに関して矢継早に質問開始。

     

    「再確認させてください。BRIDGE(Book 4)の位置づけは?どうしてBook 1, 2, 3に出てきた活動やチャンツがまた出てくるのですか」と新井氏。

    「決まった日常のやり取りだけでなく、自分の意見をちゃんと相手に伝えるには文法の指導は欠かせません。日本では文法が、“コミュニケーションで使う言語”とはかけ離れて教えられてきたために、児童英語教育では文法教育は敬遠されがちですが、機能から文の規則を教えていくことはとても大切です。それも、高学年になって初めてやるのではなくて、WELCOMEシリーズやBook 1,2,3の時にコミュニケーション活動の中で使った英語や、定着のために暗記したチャンツや歌などが十分に子供達の体の中に溜まってから、「帰納的」に文の規則をorganize(整理)させることが次のステップに行く大きな礎になります。Organizeして、規則を理解した上で、その文を応用して自分のことを言ったり、否定形や疑問形の作り方の練習をワークブックでできるように作りました。」

     

    「教える時のコツは?」と新井氏。 「アクティビティやチャンツはそれまでに何度もしているから、使えるかどうか確認するくらいで、これ覚えてる?“Do you remember this chant? Let’s see if we can recite it,OK?”  って感じで。その後、その文がどんな構造になっているか生徒の気づきを引き出すように話し合いながらLet’s Study のページに移ります。先生がただ解説するのではなくて、生徒が文の規則に気づくようにオーガナイズするのがポイント。」

    「英語でですか?日本語でですか?」と新井氏。 私:「どちらでも結構です。Book 3まで済んでいるのなら是非英語を使ってください」

    「英語で文法を教えるのは難しいのでは?」 私:「その為の英語は指導書に乗せています」

     

    「英語を文法で教えて生徒は理解できるのですか?」「日本語がわからない外国人の先生は?」  私:「先生が英語で授業をしても、生徒はテキストに記載された日本語があるので理解できます。英語で教えることは先生にも、生徒にとっても良い機会になると思います。もちろん、日本語ができない先生は英語で教えてください。子供達はテキストの日本語を見て十分理解できます」

    「Let’s Writeの意図は?」—–「気づいた文型(form)を使って自分のことを書けることが目標です。だから設問は、生徒個人を無視したような、この文を否定形にしなさい、とか、疑問形にしなさいといった設問ではなく、“Write each sentence. If they are not true for you, rewrite them using “not”にしたでしょう。

    「書いたら終わりですか?」

    「いや、自分のことに関する設問なので、書いた内容について先生が質問を加えて、そこからクラスで会話を拡張できるようにしています」

    「たとえばどんな質問?」 ・・・・私はだんだん腹が立ってきて、「書いたでしょう。それに対する質問例をたくさん指導書に!」

     

    いやはや新井氏はプロの編集者です。たとえ自分が知っていることでも、もう一度著者から言わせる。それが現場の先生に一番理解してもらいやすいことを知っているから…(腹黒い奴!!) 彼女の質問はまだまだ続きます。時々、わざと私を苛立たせる技術を散らつかせながら。

     

    「ラーニングワールドシリーズ最終巻のTHE FUTUREはReadingのためのテキストですか?」

    (その質問で中本、ムカッと来る) 「そうじゃないことぐらい解っているでしょう。私は元々、中学3年生で自分で情報を取り、自分の中で消化し、自分と人の意見を交換させながら、自分を発信させていく子供達を育成するというDestinationを定めていて、そこへ到達するために幼児から発達段階に応じて「何を」「どんな手段で」教えるかを熟考してこのシリーズを作ってきたのであって、幼児・児童英語教育だけに興味があるのではない!!!」

    *教材のタイトルとして、Learning World Book 6 THE FUTURE にTHEを入れることにこだわったのは、漠然とした”未来“ではなく、ラーニングワールドシリーズ10巻を通して「到達する未来」の意味を大切にしたかったからです。

     

    (40年近く前、私がこの業界で認められた最初の学会発表―JASTEC(日本児童英語教育学会)では、児童英語の学会だと知った上で、児童英語教育を受けて中学生になった生徒たちを引き連れて実践発表をしました。当時はビデオによる発表ではなく、実際に中学生を10人ほど連れて行って、学会会場でぶっつけ本番で授業を先生方に見せ、その後、授業の内容を解説するという発表形式でした。その時私は、歌ったりゲームをする楽しい授業ではなく、児童英語教育の到達目標、結果を示した発表をしたかったのです。)

     

    「だからぁ (まさに新井氏の思うツボ。私はだんだん興奮し、声を荒げて自分の考えをわざとゆっくり言うことに。) THE FUTUREは単なるReading教材ではなくて、情報を取って、情報を取るのは文からだけではないでしょう。書かれたもの、見るもの、そして聞くもの。それらの情報を母国語と英語で自分の中で消化して、それを理論的にまとめて自分の考えを構築し、効果的に相手に伝えることができる」

     

    「そのためには先入観を持たないで自分を臆せず表出できることが重要で、それがラーニングワールドシリーズの到達目標でしょう。(自分で編集した『実践家からの児童英語教育法 解説編』の「国際コミュニケーションを育てる活動」pp.38-44 をもう一度読み直せ!!!)」

     

    「ラーニングワールドシリーズは、ある年齢では楽しく、ある年齢では知的好奇心を刺激し、学ぶ楽しさを体感させながら、先取り教育ではなく、根の部分をしっかりと育てながら子供達がその最終目的に達することができるように構成されたシリーズです。」

    ここまで一気に喋ったところで、してやったりと彼女が笑ったのを私は見逃しませんでした。その後も2人の禅問答のような駆け引きは暫く続きました・・・・。

     

    2日間のバトルを終えて、芦屋駅前の居酒屋で2人で乾杯。この後、やっと静かな日常に戻ることが出来ると安堵していた私でしたが、東京への帰り際、去っていく前に新井氏が一言、「あ、先生。言うの忘れていましたけれど、今月のエッセイ、明日の朝くださいね」  あぁ~!!

    本年もよろしくお願いします。

     

    Vol. 33 That’s the way it is.

    子供は小さい時から様々なことに興味を持ち、疑問を持ちます。どんなお母さんでもある時期、子供からの「なぜ?」「どうして?」の質問攻めに遭い、つい面倒になって「どうしてでも」「なぜでもそうなの」(That’s the way it is.)「ずっとこうだったからそれでいいの」と答えてしまった経験が少なからずあると思います。しかし、我が家では子供が物心ついた頃から「“どうしてでも”は答えになりません」が二人の合言葉でした。そのため、疑問を持てば必ず調べ、理論的に納得できるまで、答えや解決法を調べるという面倒な過程を辿ることになりました。その結果、息子はガチガチの理系人間になり、私は理屈っぽいおばさんになりました。現在の年齢になり周りを見回してみると、性別や専業主婦、働く人にかかわらず、疑問を持たずに目の前の事項をこなしながら生きてきた人と、疑問を持ち、自身の考えに悩み、道を切り開いてきた人では、長い間にずいぶん違いが出てくる気がします。もちろん、どちらの生き方が良いか悪いか、ではなく。

    中学3年生の時、神戸にあるインターナショナルスクールに行ったのがきっかけで、日本の英語教育の方法に疑問を持ち、今日までずっと「使える英語」を習得するための英語教育を突き詰めてきました。世間や学会がどう言おうが私には関係ありませんでした。英語を好きになり能力を付けていく教え子だけが私に指針を与えてくれました。その教え子たちが示してくれた結果が私を突き動かす原動力となり、そのことに何の疑問も持ちませんでした。

     

    しかし、先日とある講演を終えた時、ある先生が「あぁあ、カードをフリップしたり、カードを取り合いっこしながら単語を教え、文法と訳を教えるだけなら楽だったのに、言語教育なんて言いだして厄介なことになったもんだ」と仰ったのです。そうです、同じ給料をもらって同じ時間を使うなら、楽な方がいいに決まってる。それが労働の効率が良いということ。。。私は、驚くとか怒るとかでなく、「あー現実はそうなんだ」と妙に納得し、その言葉が心に残りました。

    日本の英語教育の行く先はまだまだ定まっていません。私は自分の信じることを具体化するために実践を積み、勉強も重ねてきましたが、「従来の楽な教え方」を前に屈してしまいそうです。いやいや、「なぜでもそうなの」「ずっとこうだったからそれでいいの」は答えになりません。ラーニングワールドはアプリコット出版と共に、従来のパターンプラクティスや単語の習得だけを目的とした教え方に疑問を持ち、新しい教え方に挑戦してきました。

     

    そんな中、鳥飼玖美子先生がおっしゃったことに、勇気をもらいました。以下朝日新聞11月18日からの抜粋です。

    「・・・4技能の土台は読解力、つまり「読む」ことです。読むことによって単語の使い方や文章の組み立てを学び、それをもとに書くことを学ぶと、聞いて分かるようになる。そして話せるようになるのです。日本では多くの人が自己紹介や道案内などが「話す」ことだと勘違いしているようです。日常会話は決まり文句を覚えてしまえばいい。(略)でも、「話す」ことは、自分の考えや主張を英語で発信できるか、英語の理論で伝え理解しあえるかなのです。そのためには、英語という言語のルールを知らなければなりません」それが文法です。 (略) 「話す」教育が必要ないと言っているわけではありません。高校まででも、読んだことについて討論したり、発表したりして4技能を総合的に学習すればいい(後略)」 (朝日新聞2019年11月18日「英語民間試験見送り 今後の課題は」より)

    上記に加え、情報を得るのは、書かれたものの読解だけではなく、現実の日常やテレビなどの(実)映像を伴うものがその大半だということを考慮し、ラーニングワールド最終巻 “THE FUTURE” (編纂中)では“読む情報、聞く情報、見る情報”という3種類のソースが単独、または複合された情報を英語で理解し、自分でまとめ、討論、発表(口語・レポート等)する能力を育成できるように構成したので、この記事を読んで溜飲が下がる思いでした。

    ラーニングワールドシリーズは決して楽しいだけの教材ではありません。

    鳥飼先生の言葉をお借りすると、「英語で発信されている情報を基に自分の考えや主張を発信できる。英語の論理で伝え理解しあえる」子供達を育てる到達点(Destination)を目指して作られたコースブックです。

    3,4歳から発達段階に応じて、インフォメーションギャップのある活動やCreative な活動を通じて自分の考えを持ち、まとめ、表出できる活動がデザインされています。定着を促すチャンツや歌に楽しいリズムやメロディを付け、内容には年齢に応じたユーモアを入れて子供達に親しみやすくしました。

    そして、ある程度学習を経た時点で、言語活動やチャンツを使って言語のルール(単語の使い方や文の組み立て)を帰納的に学ぶ“BRIDGE ”によって、より深く明瞭に自分の考えを相手に伝えることができるのです。その意味でBRIDGEは次のステップに行く重要な過程と言えます。その後“TOMORROW”では、より複雑な文構造を使ってより深く、より理論的に英語で伝え理解しあうことに焦点を当てました。そして、“THE FUTURE” 終了時には、あるまとまった英語の文または映像から情報を的確に得て、そこから論理的に自分の意見を英語で発信でき、他者とコミュニケーションできるようになることを到達点として、この全10巻という長いコースブックに取り組んできました。

    「ずっとこうだったからそれでいいの」に対する私の挑戦です。一人でも多くの先生方に理解していただきたいと思いながら。

    I thought I reached the end
    The end of a long long journey
    Only to find it’s not over
    There’s so much more to discover  [銀河鉄道999] by 奈良橋陽子さん

    Vol.32 徒然なるままに

    徒然なるままに、日暮らし、硯にむかひて、心に移りゆくよしなし事を そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。
    皆さん、お久しぶりです。Learning World for THE FUTURE  の第一次脱稿を終えた後、しばしの間 “つれづれなるままに 日暮らし” を続けておりました中本です。 しかし、今この「つれづれなるまま」の英語訳を調べてみますと、“to kill one’s boredom”(英辞郎調べ)になっていました。 やっと手に入れたこの自由な時間ですので、boredomではなくせめて、spare time かunoccupied time に欲しかったと思うのですが。 ともかく、 時間を過ごしている間に社会で起きていることに対しての疑問や怒り(?)が次々と心に浮かんでは消えていきます。
    徒然なるままに日暮らし、コンピュータにむかひて、心に移り行く疑問や怒りをそこはかとなく打ち綴れば、アプリコット出版の新井氏から “それ欲しけれ(!?)”って依頼が来ちゃった。 ってところでしょうか。

    環境問題、地球温暖化、企業の不正、医学部入試男女差別問題、大学入試英語民間委託などなど、怒りが募るばかりです。そんな中、最近、嬉しかったことは 文科省が英語教育に関して、外国語によるコミュニケーションにおける見方、考え方を明言したことです。下記にその要旨ざっとまとめてみました。

    外国語で表現し、伝え合うために、外国語やその背景にある文化を、世界や社会、他者とのかかわりに着目して捉え、コミュニケーションを行う目的、場面、状況等に応じて、情報や考えなどを形成、整理、再構築することが重要で、そのためには授業の中で子供が思考している場が必要。 パターンプラクティスやリピート練習についてはメタ認知が働いていないので コミュニケーション活動とは言わない。指導者は練習思考活動の違いを理解し、子供に言葉(語彙、語句、表現)を選ばせなければならない。
    授業中、先生が英語の訳を言ったり語句を提示することは子供の推測する力をさまたげる。

    私は40年近く前に日本の子供達にActive Learningの楽しさを教え、英語を道具として世界で活躍できる人間を育てたいと英語教室を開きました。文法の解説、パターンプラクティスや書き換え、部分訳や単語の習得だけを行ってきた日本の英語教育に疑問を感じ、当時市販されていた児童用の英語のテキスト全てを調べて満足のいくものがなく、「思考活動と自己表現の表出」、英語のフレーズを効果的に定着させる 「チャンツ」、そして、情報や考えなどを形成、整理、再構築するアクティビティを中心にしたオリジナルテキストを作り始めました。 そのテキストがアプリコット出版の目にとまり、ラーニングワールドシリーズが誕生したのです。

    その後、コミュニケーション能力を高める英語教育の在り方を、アプリコット出版主催のワークショップや児童英語講師養成講座,講演などで発信してきました。 ラーニングワールドシリーズには自分の考えを構築し、それをクラスで発表したり、情報をまとめたりする活動が多くあるのは皆さんが承知してくださっていると思います。 世間が、そして文部科学省が私の訴え続けてきたことを受け入れてくれたのだと感無量でした。 大勢の学習者を一斉に教えなければならない学校教育の中では、思考活動を無視したパターンプラクティスや文法の解説の授業の方がよほど教えやすいでしょう。

    学校教育の中で個々の学習者の考えを構築する活動は指導者の力量が問われるでしょう。

    しかし、ずっと失敗してきた日本の英語教育の舵が大きく切られたように思います。
    続いて中本が「怒って」いることをお話ししましょう。

    それは、上記のコミュニケーション活動を現場がわかってないということです。

    小学校だから楽しければ良いとばかり、英語教育とは全く関係のないゲームに興じている英語の授業がどれだけ多いことか。「楽しい」ということを誤解している先生方があまりにも多い。学校でおこなう授業は「知的好奇心を刺激する楽しさ」を目的としなければなりません。カードを取り合ったり、勝ち負けを競うゲームで盛り上がったりしているだけの授業では子供達はゲームを楽しんでいるのであって、言語としての英語の勉強しているのではありません。 そんな授業が横行しているのは残念でなりません。 ゲームで語彙がいくら増えても英語は話せません。その語彙をつなぎ合わせて、自分の意志を言えるようになるように導かなければならないのです。 ゲームは動機づけの一つの手段であって目的になってはならないと思います。

     

    書いているうちに、ますます腹が立ってきました。 「あやしうこそものぐるほしけれ」(現代訳:(思わず熱中して)何かに憑かれたように止まらなくなるものだ。) Take it easy.

    この続きは是非、10月27日からの「子供に英語を教える講座」でお聞きくださいね。

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    イベント係より先生方へ

    ★中本幹子先生が講師を務められる  「子どもに英語を教える講座」 はコチラからご覧ください。 

    ■第1回:10/27(日)    ■第2回:11/10(日)  ■第3回:11/23(土・祝)  ■第4回:12/1(日)  ■各講座の開催時間:13:00 ~15:30

    Learning World シリーズをこれからお使いの方、ご検討中の方もご参加いただけます。この機会に中本幹子先生と共に英語教育の今後について語り合いませんか?

     

    *たくさんの方に東京地区での開催についてお問合せを頂いておりますが、残念ながら当面は東京での開催は予定がございません。次回の開催につきましては2020年5月―6月頃を予定しておりますが、関西地区での開催となる見込みです。どうぞご理解いただけますようお願い申し上げます。

    Vol.31 勉強ってなあに?   

    エイム・イングリシュ・スタジオを生徒4人から始めたのは1982年で、当時私は30歳を超えたところでした。 その後、生徒は年々増えていき、15年くらいで在籍生徒数は550名を超えました。3歳で入会して大学入学まで在籍する生徒も多く、大学に入ると、受付のアルバイトに進むことが出来ますので、長い子で19年間ぐらいのお付き合いになります。数年でやめた人も含めるとエイム・イングリッシュ・スタジオで学んだ人は2000人は超えると思います。 
     
    そんな中、一期生4人の中の一人で現在ニューヨーク在住のT君が訪ねてきてくれました。私がエイムを辞めて10年になりますが、折々に元エイム生が会いに来てくれるのはとても嬉しいことです。私は元エイム生限定でfacebook をしていますが、彼とのツーショットの写真を載せると、多くの懐かしい人からのメッセージが届きました。彼らからのメッセージは世界のどこにいても、さすが大阪出身というか、エイムで鍛えられたユーモアの精神を忘れていません。
     
    ある日、シンガポール在住のI君が、「出張で神戸に来ました」とアップすると、すかさず、ロサンゼルス在住のMさんから「中本せんせ、その辺に住んでるからお昼ご飯おごってもらい」との書き込みが。。。 私が北海道にいる写真をアップすると、すかさず「僕の誕生日は来週ですので、北海道産のとうもろこしお願いしま~す。嫁と娘3人の分もよろしく!」との書き込みが入ります。 「丁度、北海道を旅行しています。おなかのすいたかわいそうな元生徒に飯を。。」と押しかけてきた輩もいます。 
      
    そして、今回やってきたニューヨーク在住のT君が「僕、ずーっと思ってたんだけど、どうしてエイムには変な先生しかいなかったんですか」と言ったものだから大変。元エイム生のおじさん、おばさん達が、「私もそう思ってた」「ぜったい変な場所だったよね」「あんな、楽しい大人たちをはじめて見た」「ところでエイムで英語の勉強をした覚えってないんだけど。。」「私も英語の勉強をした覚えが無い!」 今回だけでなく元エイム生が集まってパーティーをする時も、必ずこの話題に移っていくのです。「英語の勉強した?」「いや、覚えてない」「楽しかったことしか覚えてない」
     
    読者の皆さんの誤解を避けるために敢えて書かせていただきますが、エイムの生徒達は非常に優秀でした。中学になれば地元の中学英語暗誦大会に選ばれた学生はほとんどエイム生でしたし、高松宮杯英語弁論大会の関西代表も毎年のようにエイム生が選ばれました。AFSやYFUで留学する学生も毎年いました。英検やセンター試験の結果も優秀でした。
     
    では、なぜ、彼らは勉強した覚えが無いのでしょう。私は元生徒の現おじさん、おばさん達の話を聞いて、一人でにんまりするのです。私の教育法がうまくいった!! 
     
    エイムでは英語の単語を覚えたり、文の書き換えを無理やり覚えたりするお勉強の変わりに、たくさん、インフォメーションギャップのある活動をしました。子供達は英語を覚えるより、英語を使ってタスク(課題)を解くことに夢中になります。形容詞の語彙を覚えさせ、スペルを覚えさせるより、自分を表す形容詞をできるだけ多く探そうと持ちかけます。但し、自分を自慢する言葉を。(positive adjectives)
    また、ある時は 教室内にあるものを、There is…There are …を使ってできるだけ書きだそうと提案します。但し、人が選ばなかったものを探した人はポイントが3倍になることを伝えると、子供達の目の色が変わります。desk やchair だとポイントを3倍もらえないから、dust, outlet, glasses(誰かがかけていた)など次から次へと探します。 air やoxygen、 love なんて言い出す子も出てきます。 Creative Writing もみんな夢中で課題に取り組みます。その際、子供達の創造性を認め、発想に心から感動し、その感動を伝えることがポイントです。
     
    中学や高校になれば、英文解釈や文法問題ではなく、英文の内容についてみんなで話し合います。
    (日本語でも英語でもOK)誰かが意見を言ったら、「その考えはどの箇所(英文)から、そう思ったの?」などと内容と英文を結び付けながら授業を進めます。ここでは知的でユーモアに富んだdiscussion にすること、自身の創造性を評価することがポイントです。その後、折角だから読んだ英文の中から自分が覚えたい文を5~10選んで覚えようと導きます。
     
    エイムでは学校英語のお勉強をするのではなく、言語を楽しみたいから、子供達にActive Learning を教えたのです。
     
    ふっふっふっ。単純な元エイム生の現おじさん、おばさん達よ! 君たちはまだ、私のすばらしい教授法に乗せられた事に気づいていないのだ!ふっふっふっ。 
     
     
     

    Vol.30 京都の春    

    Spring has come! 

    中学生の時に習ったこの現在完了の文を、毎年この時期、大空に向かって大きな声で叫びたくなります。春がやってきた!!冬は嫌いではないのですが、冬の好きではないところはその寒さではなく、早く暗くなることです。4時過ぎになるともう薄暗く、5時になると真っ暗。 無性に人恋しく、さみしい気分になります。 だから、4月になって6時を過ぎても明るく、1日の活動時間が長くなると、それだけで心がうきうきします。 私の京都の家の近所の京都大学も同志社大学、京都府立医科大学も一斉に入学式があり、新しい生活に胸ふくらませたフレッシュマン達が町にあふれています。多くの新社会人が不安と希望で胸いっぱいの表情でオフィス街を歩いています。

     

    なんてことを書いたら、4月から新しいLearning World ④BRIDGE や⑤ TOMORROWを採用してくださった先生方から、「もう新学期が始まるのにまだ教材が揃っていないのでヤキモキしているのに何を呑気なことを言っている!」とお叱りの言葉を受けそうですが、この時期は既に脱稿が済み、ひらひら会議 (おわかりにならない方はこのエッセイのバックナンバーVo.18 をご高覧ください) も終わり、著者は結構、暇なのです。 もちろん、新井編集長はじめ、デザイナー、音声のディレクター、デジタル教材の制作者、印刷会社の方々は納品に向けて連日頑張っていますので、もうすぐ先生方のもとに、テキスト、ワークブック、CD, デジタル教材、指導書を全てお送りいたしますのでご容赦くださいませ。

     

    というわけで、今日は家から歩いてすぐの京都御苑 (京都御所) の桜を見に行ってきました。 京都の桜は6分咲きというところですが、京都御苑の枝垂れ桜はもう満開で、多くの観光客が桜の前で写真を撮っていらっしゃいました。 アメリカ、ドイツ、イタリア、フランス、フィンランド、韓国、中国、インドやその他判別不能の言語を合わせるとざっと10種類くらいの言語が聞こえてきます。 最近、京都で流行のレンタル着物を着て楽しそうにはしゃいでいる観光客は中国からの若い人たちです。 男の子も女の子も上手に着物を着こなしていて、一見外国の人だとは分かりません。 どの国の皆さんも春の光の中で笑顔がキラキラ輝いています。

     

    世界には、約2700の言語と約50種類の文字があるといわれています。 京都御苑にいる人々は、ほとんど同じような服装をし、スマートホンで情報を得て、スマートホンで写真を撮っています。 同じように美しい桜を、そして新しい季節をappreciate しながら、同じように家族や友達、恋人同士でその喜びを分かちあっているのに、言語だけが異なっているのですね。 Mother Tongueとはよく言ったもので、生み、育ててくれる個々のお母さんの言語がその文化とともに個々の子供に伝承されるので、 コンピューターが発達し、情報や流行が瞬時に世界中に発信され共有される現代でも、言語だけは共通になりません。 面白いなと思います。

    新しいテキスト Learning World 5 for TOMORROW の最後のレッスンUnit 10-3 に、以前から私が是非英語を学ぶ子供達に体験してほしかった活動を載せていただきました。それはいろいろな文字や文章を見たり、いろいろな言語を聞く活動です。 日本語、英語以外のいろいろな言語に触れる機会を作りたかったのです。英語のテキストブックの Learning World 5 for TOMORROW の最後のレッスンにふさわしいものだと考えました。

     

    「英語教育は言語教育であり、その規則を教える教育でははい」という考えはラーニングワールドシリーズ全10巻の一貫した理念です。 英語は自分の考えを人に伝えたり情報を分かち合う手段にすぎません。自分の考えを持ち、人と触れ合いたい、共に社会を形成したいと思う気持ちなしに言語は発達しません。もちろん、より正確に、より深く、より効率的に相手とコミュニケーションをとるために、語彙の学習や文法の学習が必要となりますが、まず、人と共存したいという気持ちありきです。

     

    先日、3歳になる孫が遊びに来て、保育園の話をしてくれました。

    「。。。。先生(アメリカ人)は日本語がわからないの。 だから。。。先生とお話しするときは★★(自分の名前)が英語を使ってあげなくてはいけないんだよ。 私は日本語も英語もわかるからね。」

    まだ、日本語も定かでない、ましてや英語が流暢に話せるわけでもないこの3歳児の言葉に、言語教育の原点を見たようでした。

     

    桜中本先生

     

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